春風従え虎が舞う
「火伏せの虎舞」=県無形民俗文化財=で知られる加美町中新田地区の伝統行事「初午まつり」は29日、地区中心部であり、見物客約4万5000人が勇壮な舞に酔いしれた。〝主役〟の虎舞は男子小中学生が2人一組で虎頭、胴幕をそれぞれ操る。まつりでは約60頭が朝早くから地区内各戸を回り、商店街や個人宅で渾身の舞を披露していった。目抜き通り「花楽小路(からくこうじ)」の瓦屋根上での舞はまつり最大の見せ場。お囃子の笛と太鼓が「本調子」から力強い「岡崎」に変わると、最高潮の盛り上がりに。春風を胴幕にはらんだ虎が勢いよく舞うたび、街路いっぱいの客から歓声と拍手が沸いた。
かつての馬産地PR
源平合戦で活躍した名馬「池月号」の出生地とされる大崎市岩出山池月上宮で、馬の守護神を祭る池月馬櫪神社が修復された。かつての馬産地を観光で活性化させようという地元住民らによるもので、25日には数十年ぶりに例祭も行われた。池月号(生食、生月)は1183年、宇治川の戦いで先陣を切って勇名をはせた佐々木四郎高綱が、源頼朝から拝領した馬。生誕地とされる場所は全国に十数カ所あり、池月上宮もその一つ。池月地区は昭和後期まで馬産が盛んで、小黒崎や池月沼を読んだ和歌が古今和歌集などの歌集に収録されている。池月馬櫪神社は小黒崎の麓、江合川のほとりにある神社で、良馬を願う人々が参拝。旧暦3月17日には例祭が行われていた。しかし、戦後は数回行われたのみでいつしか中断し、近年は社も放置され劣化が進んでいた。修復は上宮歴史的遺跡保存会(阿部忠悦代表世話人)が主導し、資金は地元の住民や企業が寄付。正面の向拝柱2本と周りを囲むぬれ縁をことし再建し、参道も整備した。
伝統と現代アート融合
加美町字原町にある工房「瑞希窯」は、同工房ギャラリーで「春の瑞希窯UTSUWA(器)展」を開いている。陶芸家の鈴木瑞希子さん(64)が手掛ける伝統と現代アートを融合した器が展示販売され、訪れた人の関心を引いている。5月6日まで。鈴木さんは大崎市古川出身。大学卒業後、堤焼4代目の針生乾馬さんに師事。5年の修行を経て1987年、現在地に工房を構えた。深緑色の「織部釉」など古典的な色調に、現代アートやモダンな文様を組み合わせた作風が特徴。飲み口の感触にこだわったり、皿を洗うときも楽しめるよう器の裏にも文様を施したりするなど、女性ならではの視点が細部に生かされている。
大崎耕土私たちが守る
南郷高(佐藤俊明校長、生徒数30人)は27日、大崎市鳴子温泉で約380年間使われている伝統的水路「南原穴堰」を清掃した。人口減少や高齢化で農地などの管理作業が難しくなっている地域を支援する「大崎耕土世界農業遺産支援プロジェクト」の一環で、農業クラブ会員と生徒有志計10人が作業に汗を流した。南原穴堰は、鳴子温泉西部の南原集落にある水路トンネルで、総延長約2㌔(トンネル部分約1・3㌔)。1640年代に手掘りで築造され、約13㌶の水田を潤している。生徒たちは、堰の最下流から南方約250㍍地点まで、農業用フォークを使って底にたまった枯れ葉を取り除き、スコップで土砂を掘り上げた。作業終了後は同組合の上野孝作組合長から堰の水管理システムについて説明を受け、岩堂沢ダムを見学した。
「大崎耕土」を後世へ
南郷高の全生徒30人が26日、同校で、講演を通して世界農業遺産「大崎耕土」について学んだ。講師に大崎市文化財課の車田敦課長補佐と、南原地区穴堰水利組合(同市鳴子温泉)の上野孝作組合長を招き、遺産認定のポイントになった伝統的水管理システムの概要や保全に向けた取り組みについて耳を傾けた。車田さんは、大崎耕土が認定された評価点について▽伝統的水管理の継承▽水を管理する契約講の継承▽居久根による生活の知恵や水田水路が織りなす豊かな生物多様性と独自の景観-を挙げた。「水管理施設約1260カ所のうちトンネル水路は30カ所ほど残っていて、300年以上を経て現代に受け継がれている。居久根は遺産申請時に約2万4000戸あったが、現在は2万戸ほど。563行政区のうち申請時に760の契約講が残っていた」と述べた。
時疾風 堂々と新入幕
大相撲5月場所(両国、12~26日)の番付が30日に発表され、栗原市瀬峰出身の時疾風 (27)=時津風部屋=が東前頭15枚目で新入幕を果たした。県内出身力士としては五城楼以来27年ぶりで、栗原出身では望山以来43年ぶり。今後は成績次第で横綱や大関と直接対決する可能性がある。時疾風は東十両筆頭で臨んだ春場所(3月10~24日、大阪)で8勝7敗と勝ち越し、新入幕を確実にしていた。時津風部屋からの入幕は、2017年5月の豊山=引退=以来7年ぶり。栗駒中、小牛田農林高出身者ではいずれも初で、東京農業大でも豊山以来10人目となった。
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