16日に始まった就職試験。「18の春」の行方はー=東北アルプス古川工場
働く意味を模索
キャリア教育確立が急務

ものづくりの充実

 「本来の志望職種ではなかった」、「仕事内容が想像とは違った」…。若年離職者が口にする言葉だ。個人事情が先行する傾向はあるが、終身雇用や年功制など従来の雇用慣行が揺らぐ中、自分なりに「働く意味」を模索する若者は多い。

 古川市のとび職少年(18)は今春、志田郡内の高校を退学し、建設会社に就職。職人になる夢を見出した。「周りは年上ばかりで、言葉遣いにはとくに気を使う。休日も予想以上に少ない。社会の厳しさを肌で感じた」。

 同級生の約10人が、同じく退学の道を選んだ。しかし現在、正社員として働くのは自分だけ。残りはアルバイトという。

 時間的余裕が多いフリーターの友人をうらやむ時もあるが、今は、仕事の充実感が勝る。「少なくとも3年は勉強しないと、技術が身に付かない。大変だが、やりがいがある仕事」と目を輝かせた。

 「ものづくり」の充実感を学んだ少年。転職するつもりは、もちろんない。

最低でも5年は

 「ものづくりの楽しさや充実感をもっと高校生に認識させ、働く動機づけを与えたい」。古川市工業会の池田政吉会長(71)は語る。そのためには、インターン(就職体験)の受け入れ拡大など、企業側の環境整備も必要ーと提言する。

 池田会長が代表を務める工場では今春、新卒者6人を採用した。良質な人材育成は、製造業全体が抱える課題だ。熟練者の高齢化や技術空洞化への懸念も拭えない。何より、若い戦力の台頭は、地域産業活性化への糸口となる。

 管内高校によると、高校生の希望職種は、事務や販売職などが中心。池田会長は、実際の仕事内容を見ない高校生が工場勤務に対し「辛気くさい」(池田会長)イメージを持つのが残念という。

 「どんな会社でも理想と現実のギャップは存在するもの。仕事の創意工夫ができるまでは、最低でも5年かかる。それまでは一生懸命勉強してほしい」と語り、今春入社した新人の背中に熱い視線を送っている。

就労観の確立を

 県労働局や企業、学校でつくる就職問題検討会議は昨年度、高卒就職活動の慣行だった「一人一社制」から「複数応募制」へと見直し、高卒就職の門戸開放を図った。

 しかし現場では、「複数応募の許可は10月から。人気企業は九月中に採用試験が終わってしまう。実質的な変化には乏しいのでは」(市内高校の進路指導教諭)ととらえる声が多い。

 また、応募機会が広がれば、その分だけ競争は激化する。「(生徒は)例年以上にシビアな職業観を求められている。就職を“生活の一手段”などと甘く考えるようでは、内定獲得は難しい」。

 大崎地方では、新規高卒者の「雇用のパイ」の大きさに絶対的な変化はないのが現状。学校やローワークなどの機関、企業が連携し、制度改革による就職環境の改革に取り組む必要がある。

 また、高校生の勤労観や職業観の育成が急務だ。文部科学省が今年度スタートさせた「キャリア教育推進プラン」事業などを通じ、若年層全体に対する実地的なキャリア教育カリキュラムの早期確立が望まれている。

◆メモ…「一人一社制」は、学校からの推薦を1社に絞って受験させる仕組み。企業には一定水準の人材を安定採用できるメリットがある。高度成長期、新卒者採用をスムーズに行う狙いで確立されたが、一方では、「1社の合否決定まで他企業に応募できず、自由な就職活動の妨げになる」など批判が増加。県内では昨年度から、10月以降の入社試験を行う会社に限り、1人3社までの応募が可能になった。(都築理記者)