大崎市民活動サポートセンターが開いた「おれおれ詐欺」防止口座。被害防止には、詐欺の手口を学ぶなど自己防衛意識を高める必要がある
 今年1月4日から、金融機関の現金自動預け払い機(ATM)を使った現金の振り込みが、一回あたり10万円までに制限された。詐欺防止の施策の一環で、これにより、県内の「おれおれ詐欺」被害も激減している。

 その一方で、県警捜査二課の斎藤昌彦管理官は「逆に“だから自分は引っかからないはず”いう安心感が広まるのが怖い」と懸念。▽かならず電話を一度切り、本人に確認する▽周囲に電話の内容を相談する−などの被害対策徹底を説く。

 重要なのは、これまで報告されてきた詐欺の手口を、しっかりと頭に刻み込むことだ。

 「借金の保証人になった」「会社の金を使い込んだ」「女性を妊娠させた」「税金が還付される」逢。すべてが詐欺のシナリオ。周囲に相談しにくい内容が多いのは、周囲への相談による発覚を防ぐためだ。独り暮らしや高齢夫婦の女性など、身近に相談できる相手が比較的少ない相手を狙う傾向も根強い。

 電話口にはトラブル相手はもちろん、弁護士、警察官などが次々と登場する。中には大声、早口で一方的に振り込みを強要する犯人もおり、気が動転してしまう。被害に遭う典型的なパターンだ。

二段構えの罠も

 犯人は、別のATM近くで待機しながら携帯電話で振り込みをあおり、入金確認後、すぐに金を引き出す。警察への被害届提出を受けて銀行が口座凍結に動いても、すでに手遅れ逢という例がほとんどという。

 電話の時間帯にも注意が必要だ。正午から午後2時ごろにかけて電話をかけて、3時の窓口終了を前に「今日中に金が必要」と要求して、焦りを誘う。

 昨年10月末、大崎市の主婦は、市職員の息子を名乗る男性にだまされて150万円を振り込んだ。このとき「役所の金を使い込んだ」という涙声の電話も、正午すぎに掛かってきた。

 2月の事件では、夫婦宅に送金を促す電話がある前日、長男を名乗る男が「携帯電話の番号が変わった」と伝えてきた。番号で相手を信用させるという二段構えの罠(わな)で、昨年春から増加しているという。

自己防衛の意識を

 夫婦の事件では、長男を名乗る男が電話口で「会社を休んでいる」と話した。実は長男の職業は自営業。「会社を休む」というのはおかしい逢。違和感を感じたことで、夫婦が冷静さを取り戻した。

 「ちょうどお昼休み明けで客が少なかった」(窓口の女性行員)ため、行員がじっくりと相談に乗れたという事情も大きかった。この夫婦のように、何気ない会話の中で詐欺の兆候を感じ取り、被害を防いだ例も多い。

 金融機関の窓口は、被害防止を瀬戸際で食い止める最後の砦(とりで)として、重い役割を担っている。各会社ともにマニュアルを作るなど対策に乗り出した。

 昨年11月には、七十七銀行鹿島台支店で「女性を無理矢理妊娠させた息子の示談金」として192万円を振り込もうとした大郷町の女性が、詐欺を察知した女性行員に説得され、事なきを得た。

 双方の事件では行員が説得に成功したが、その一方、各金融機関は「客の個人事情を聞き出すのは難しい」と口をそろえる。実際、だまされているのが明らかなのに、被害者が頑として譲らずに送金してしまう例も、各地で報告されている。

 百戦錬磨の「おれおれ詐欺」犯人に立ち向かうには、窓口係の機転や、粘りの説得にも限界がある。被害防止の基本は「自分の身は自分で守る」。卑劣な詐欺の一掃は、住民一人ひとりの意識高揚にかかっている。

(第一報道部・中川満、都築理)