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| 表彰状を受け取る小野寺支店長。「おれおれ詐欺」の巧妙化が進む中、金融機関職員が被害を未然に防いだケースも多い |
定期預金を解約して
その主婦が東北銀行古川支店=大崎市古川駅前大通=窓口に現れたのは午後一時過ぎ。窓口業務の女性行員は「ちょっとおかしいな」と直感した。
顔色こそ普通だ。しかし、妙に慌てている素振りが気に掛かる。聞けば、定期預金を解約して、すぐに送金したいという。
支店では、過去に二度、振り込め詐欺の被害を水際で防いだことがあった。その記憶もまだ新しく、行員も、窓口の客と積極的にコミュニケーションを取ることで、詐欺の「兆候」を感じ取るよう心がけていた。
「何にお使いになるのですか」。言葉づかいに気をつけながら事情を聴き、渋る主婦から「長男が保証人になった。189万円を今すぐ送らなくては」という言葉を引き出した。
その約一時間前。主婦は、仙台市に住む長男を名乗る男から、電話で「友人の借金保証人となったが(友人に)逃げられた。500万円のうち、残額189万円を今日中に支払わなければ。金を借りに信販会社へ行こうと思う」と告げられた。
「頭が真っ白になった」という主婦は、夫と二人で市内金融機関を走り回り、預金をかき集めた。それでも足りず、定期預金を解約したのだ。
「おやじ、ボケたのか」
窓口の女性行員は、すかさず、小野寺正浩支店長四六に対応を引き継いだ。「とにかく、一度確認してみては」。小野寺支店長は、駐車場の車にいた夫も呼び、案内した応接室で、夫婦を粘り強く説得した。
「三時を過ぎると振り込みができなくなる…」。当初は、夫婦の態度もかたくなだったが、徐々に説得に耳を傾けるようになった。夫が、はやる気持ちをおさえて、長男と名乗った男の携帯番号をダイヤルする。
「確認のために、おまえ(長男)の姉の名前を言ってくれ」「どうした、おやじ何を言うんだ。ボケたのか」。
主婦がその横で、今度は長男の自宅に電話をかけると本人につながった。借金の事実など、もちろんない。受話器を握ったまま、横で通話中の夫に「サギだよ!」。その声が電話から伝わったのか、夫の通話は、相手から一方的に切られた。
夫婦は、その場で、定期預金を組み直した。「おれおれ詐欺事件の報道に触れるたびに“なんで振り込むのか”ねっていたが、自分たちが引っかかるとは、考えてもいなかった」と口をそろえた。
古川署は一日、振り込め詐欺を未然に防いだ功績で、同支店に感謝状を贈った。
被害総額は8億超
夫婦は辛うじて難を逃れたが、気が動転したまま、相手を信用してしまうケースは後を絶たない。県警捜査二課によると、昨年一年間に県内で起きた「おれおれ詐欺」は264件、被害総額は約5億1100万円に上る。
使用した覚えのないインターネットサイトの接続料などを要求する「架空請求詐欺」、中小企業などに事業資金の融資を持ちかける「融資保証金詐欺」を加えた「振り込め詐欺」全体では、576件、被害総額は8億円以上となった。
件数は、前年から150件近く増加しており、統計を取り始めて以来、最悪の数字という。60代未満の被害者もおり、ターゲットはもはや高齢者だけではないのが現状だ。