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| 産廃施設建設が予定されている鳴子町向山地区 |
賛成、反対両派が対立
鳴子町向山地区の産廃処理施設
鳴子町向山地区に建設が計画されている産業廃棄物処理施設(以下産廃施設)をめぐり、誘致を進める地元住民と、反対運動を展開する町内外の各種団体との対立が深まっている。「鳴子町はもちろん、近隣自治体にも有益な施設。安全性も問題ない」とする賛成派に対し、「大崎耕土の水源地が汚染され、農作物への影響は必至。風評被害なども心配」と訴える反対派。賛成派は各地で説明会を開き理解を求めているが、反対運動は広がりをみせており、両派の合意点は見いだせない状態となっている。
産廃施設の誘致を進めているのは、向山地区の畜産農家らで組織する向山地域活性化事業委員会(牛坂建委員長、以下向山委)。昨年4月に設立された(株)循環(本社・仙台市宮城野区五輪、鵜沼健一郎社長)が、同町大口字通原地内およそ13万平方メートルへの進出を計画、予定地付近へ鳴子開発事務所も構えた。
計画によると、有機肥料製造施設、焼却炉(廃熱利用発電ボイラー施設)、がれき破砕施設などを設け、可能な限り資源をリサイクル。再利用できない焼却灰や汚泥などは「管理型最終処分場」に埋め立て、処分場からの浸出水(通常約50t、最大200t程度)はすべて焼却炉の冷却水として利用し、最終処分場に接触しない水だけを流すという。施設に4カ所程度の地下水検査ポイントを設け、毎月1回の水質検査(義務は年1回)を行う。民家1件が予定地にかかってしまうが、すでに移転の同意も得ている。地元雇用は40人以上を見込んでいる。運搬大型車の3分の1程度は川渡地区の一部温泉旅館や小学校前を通過するが、児童の通学時間は通行しない協定を結ぶ方針。
「誘致の最大の目的は、家畜ふん尿による地下水の汚染防止」と語るのは、向山委の小川秀雄さん。小川さんらによると、向山地区は終戦を迎えた昭和20年以降に開拓農家らが入植、主に畜産に取り組んできたが、長年にわたる家畜ふん尿の散布が飲料水にも悪影響を及ぼした。飲料水1リットルあたりの「硝酸性及び亜硝酸窒素」基準値は10mg以下だが、同地区の既設水源地は、最もひどい昨年1月時点で8.0mgも含有。現在は、ほぼゼロの希釈用水源地の水で3.5mgにまで薄め、何とか利用している。
「きちんとした企業と地域が一緒に産廃施設を整備すれば、地下水を汚染していた家畜ふん尿を良質な堆肥(たいひ)として利用できるようになり、水も今よりきれいになる」と小川さん。「利用法がなかった向山住民の共有地も(施設建設地として)有効活用でき、家畜死がいやビニール類の処理、産廃の山中への不法投棄防止、雇用確保など多くの問題解決が見込める。施設の視察が相次げば、川渡温泉をはじめ町への経済効果もある」と語る。循環側も「予定地は山頂で、雨天時に高い場所から大量の水が流れてくることはない。また、火山灰が堆積した土地で、ほかの土地より水の浸透が早く、短期間で伏流水として出てくるため、(汚水を流す)ごまかしはきかない」と説明する。
向山委と循環は、一月下旬から関係する地域に出向いて説明会を開催、住民の理解を求めている。向山委は「一部住民からは理解が得られた」とするが、反対派の動きは、しだいに大きな広がりをみせている。
地元では、川渡温泉親交会(藤島孝雄会長)がいち早く反対を表明。観光協会や旅館組合など他の反対派団体と連名の要望書を町と町議会へ提出したほか、丸森町の産廃施設反対運動に成功した人たちと直接会うなど反対運動の対策を練り、向山の水が流入する多田川を抱える加美町では、星明朗町長が建設反対を明確にし、同町や古川市の議会も建設反対を決議。汚水による実害および風評被害を心配する農業団体や森林組合などからも反対の声が上がっている。加美町と古川市の住民を中心に、反対派グループ「水資源と命を守る会」(内藤哲夫会長)も発足。大規模な署名活動を展開している。
隣接自治体の首長や議会が反対に動く中、町内に関係した政治家の動きは鈍い。鳴子町議会2月定例会で、産廃施設に関する一般質問が出されたが、高橋勇次郎町長は賛否を明確にすることを避け、あいまいな答弁に終始。同町議会も、反対決議はしていない。「町長も議会も、自分の選挙などに関係して動けないのだろう」と藤島会長。産廃施設の計画が明らかになった後、古川市議会議員らが話を聞きに来たことを明らかにし、「鳴子町議会より、古川市議会のほうが心強い」と地元町議らを皮肉る。さらに「廃棄物を埋めた後、何10年と長い時間が経過しなければ本当の姿は出てこない。大荒れの天候になれば、汚水が流されることも心配。観光地としての評判も良くなるわけがない」とも。
向山委の「水質環境の改善を第一の目的に誘致したのであり、金もうけのために誘致したのではない」という主張に対し、藤島会長は「向山の開拓農家らは、生活が貧しいから産廃施設のようなものを誘致したのだろう。(産廃施設以外の)向山の活性化策を無責任に提案できない私たちとしては『反対』と言うしかない」と。
反対派の動きに、向山委のひとりは「反対派の多くは、ごみ問題に正面から向き合おうとしない。反対するにしても、まず説明を聞き、内容を精査してからにすべきではないのか」と非難。2月に反対派が開いた集会で、講師の弁護士が、循環関係者の中にいわゆる“札付き”がいる旨の発言をしたことに対しても、循環側は「だれなのか名指ししてもらいたい。間違いなら名誉棄損ではないのか」と激憤。両派の主張はまったくかみ合わず、泥仕合の様相さえ呈してきた。
向山委と循環は、近日中に大崎土地改良区関係者を対象とした説明会を3カ所で実施予定。要望されれば、ほかの地区でも説明会を開くとしている。一方の反対派は、川渡温泉親交会が他団体と反対運動の連携を模索。水資源と命を守る会も、集まった署名を県議会六月定例会の前に、許可権を持つ県や県議会へ陳情する方針だ。(中川満記者)