![]() |
| 小牛田、南郷両地域を貫く鳴瀬川。「美しい里」2年目のまちづくりが始まる |
新鮮な朝採り野菜がぎっしりと並ぶ直売所、全国にブランド米や加工品を出荷する農業法人、東北屈指のバラ農園。地平線いっぱいに田園が広がる南郷地域には、町の農業を担う中核施設が集まる。
国の経営所得安定対策導入を見据えて、昨年7月までに全地区で集落営農組織が発足した。ほ場整備や転作など県内屈指の先進地農業を生かして、町は市場競争力の高い農産物を「美里ブランド」として売り込む考えだ。
だが、農業にも高齢化による担い手不足が忍び寄る。「農家は自分の代で終わり」(50代農業男性)という声も聞かれ、南郷地域の農業男性(57)は「ブランド確立の前に、若手後継者が農業に魅力を感じるような環境づくり、基盤整備が先決だ」と指摘する。
また、仙台市内に通勤する小牛田地域の30代女性は「農業振興も大切だが、安心できる子育て環境づくりにも取り組んで」と話す。老朽化に伴う町文化会館の改修事業には「これを機に照明・音響設備などを一新してほしい」(利用者の30代男性)という声が寄せられた。
◇ ◇
美里町の2007年予算編成では、厳しい財政状況への危機感から、各課に「経常経費の10%削減を」(佐々木功悦町長)という指示が飛び、前年度約百六億円だった一般会計予算の規模縮小は必至だ。多様な住民ニーズの中で、限られた予算をどう配分するか。町には、よりシビアな手腕が求められる。
06年度の普通交付税額は31億1300万円。前年比1.5%減だが、斎藤幸弘企画財政課長は「削減幅を最小限にできた」と“合併効果”を強調する。ただし、急激に進む行財政改革の中で、国の財政支援の先行きに不透明さは残る。
その一方、2町から引き継いだ地方債残高118億円に加えて、町は本年度、コミュニティセンター建設などを含む小牛田駅東開発に5億4000万円超を起債した。合併特例債は10年間で58億の活用を見込み、駅東開発のほか両地区を結ぶ町道の高規格化事業などに充てる。償還がピークを迎える09−10年ごろまでは我慢の財政運営が続く。
自治体の財政状況を示す指標となる実質公債費率は、本年度が16%。財政運営に「黄信号」がともる18%超を防ぐために特例債の一部を基金積立にまわすなど、新町の足場固めに懸命だ。効率的な行財政運営の確立に向けて行革プラン策定にも着手した。
◇ ◇
小牛田、南郷、涌谷の3町による“遠田市”構想の破たんを受けて、駆け足の合併協議で誕生した美里町。一年目のまちづくりが着実に進む一方、10−20年先を見据えると、人口2万7000の小規模自治体が自立する道のりは決して平たんではない。
道州制導入議論の高まりなどを背景に、地元県議は「(平成の大合併に次ぐ)二次合併は起こりうるし、その場合は吸収合併になる懸念がある。まず美里、涌谷両町が合併して市にならなければ、周辺地域に埋没してしまう」と語る。すでに広域連携を深める商工会関係者の間にも「2町合流」を期待する声が出ている。
地域の将来像を住民にどう示すのか。新町のまちづくりと並行して取り組む必要がある課題だ。
おわり(第1報道部 都築 理)