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住民の要望や悩みを聞く「田川ダム生活再建相談会」。「早く造ってほしい」という要望が大半を占める |
昨年12月下旬、加美町宮崎の宿泊施設で開かれた「田川ダム生活再建相談会」。寒風沢地区の住民約10人が参加し、国土交通省や加美町の職員から事業の進ちょく状況の説明を受けた。水没予定地に住む農業、石山きよのさん(73)は不安げな面持ちで説明を聞いていた。
石山さんが旧小野田町から嫁いだのは1953(昭和28)年のとき。当時、寒風沢地区には電気もラジオもなく、ランプの明かりで18人家族が食卓を囲んだという。「こんな生活、3日ももたないと思った」と振り返る。
例年、春になると住民総出でかやぶき屋根の修復作業があった。近くの山でカヤを刈り取り、約30戸の屋根をみんなで直す。「田植え、稲刈り、雪かき…。大変だったけど、みんなでやるとあっという間だった」
石山さんはこの10年間、一人で暮らしている。夫は25年前に他界し、長男と二男は仕事の都合で生家を離れた。体調面に不安があり、二男が暮らす大崎市古川に引っ越すことも考えたが、簡単にわが家を捨てることはできない。
92(平成4)年ごろ、石山さんは当時の国の担当者から「(ダムは)5年後に完成する予定」と説明を受けたという。「それが5年延び、また5年延び、今となってはいつできるのかも分からない。国にもお金がなくて大変なんだろう。私が生きているうちにダムを見ることはないかもしれない」と不安を口にする。「家が水に沈めば息子のところで暮らす踏ん切りがつくのに。将来のことはあまり考えたくない。疲れるから」
◇ ◇
相談会は年3回ほど行われていて、国が事業の進ちょく状況を説明する一方、住民の要望や悩みを聞いている。ダム建設に反対する意見はない。「早く造ってほしい」という要望がほとんどだ。
寒風沢地区はダムとは別に過疎化の悩みも抱えている。19戸のうち後継者が同居しているのはわずか4戸。「このままでは集落が崩壊する」(行政区長・猪股一さん)という危機感はかねてからあったが、そこへきてダム建設の遅れが住民の不安をかき立てる。「また予算が削られるらしい」「計画倒れになるのでは」。根も葉もないうわさばかりが行き交う。
地元住民らで構成する「田川ダム建設対策協議会」の早坂洋夫会長(73)は「ダムはいつできるのか、できたら生活がどう変わるのか、水利権はどうなるのか、道路はどうなるのか、分からないことだらけ。これから寒風沢はどうすればいいのか」と語る。(第1報道部 板垣英人)