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| かやぶき屋根の早坂良次さん宅。水没予定地のため改築を見送っているが、大雨の際は雨漏りがひどいという |
宮城県加美町役場宮崎支所から約10km西の寒風沢地区。県内有数の豪雪地帯で、国道や県道はなく、観光スポットも商店もない。主産業の農業は停滞気味。住民の高齢化も加速度的に進んでいる。
この地区でダム建設の調査が始まったのは1976(昭和51)年のとき。90(平成2)年からは建設省(現・国土交通省)が水位観測や環境調査などを実施している。
地区で最も西にある4戸は92(平成4)年ごろ、水没予定地に指定された。このため住民は、住宅の改築や新築をできるだけ見送って引っ越しに備えてきた。しかし、この15年間は“調査”ばかり。隣接する二ツ石ダムでは建設が着々と進んでいるが、田川ダムでは工事が始まる気配さえない。
農業、早坂良次さん(68)は築90年以上の木造平屋に妻(66)と2人で暮らしている。かやぶき屋根からの雨漏りが「悩みの種」(良次さん)。昨年末の大雨の際は「バケツを5つ並べてもまだ足りなかった」という。「(ダム建設計画が)こんなに長期化すると分かっていたら、もっと前からトタン屋根にしていたのに…」
長男夫婦と孫は2年前の冬、たまりかねるように里に移り住んだ。長男はトラック運転手で、狭い雪道では帰宅もままならないためだ。良次さんは「それでも、住み慣れた家を簡単に捨てることなどできない」と語る。
団体職員、早坂繁久さん(56)も水没予定地に住む一人。一昨年の夏、かやぶき屋根からとうとうトタンに張り替えた。
繁久さんの祖先は今から600年前に寒風沢地区に移ったと伝えられている。「先祖伝来の土地をダムに沈めたくない」という葛藤(かっとう)を押し殺し、調査にも積極的に協力してきたのは「ダムができればみんなが水害の心配をせずに暮らせると信じていたから」(繁久さん)だ。「このままでは私たち家族の先行きが見えなくなる」と不安を募らせる。
田川ダムの調査を進めている大崎市古川、東北地方整備局鳴瀬川総合開発調査事務所(坂本良三所長)によると、建設予定地周辺の昆虫や動植物、大気、騒音、振動などの調査は大詰めを迎えた。県とともに策定を進めている「鳴瀬川水系河川整備計画」に田川ダム建設が盛り込まれると具体的に動き出すことになるが、期限は「今後30年のうち」(坂本所長)という。(第1報道部 板垣英人)